ユニバーサルデザインの歴史

ユニバーサルデザイン(ユニバーサルデザイン)の歴史は、障害者や高齢者の生活改善から始まり、現在では広く社会のさまざまな分野に影響を与えています。以下にその発展の歴史を概説します。
初期の概念と実践
- 1950年代 – 1960年代:
- バリアフリー運動の始まり: アメリカでは、障害者の権利運動やバリアフリーデザインの概念が生まれ始めます。特に、ベトナム戦争からの帰還兵の障害者問題が社会問題化したことも背景にあります。
- 1970年代:
- 法律の制定: アメリカで「リハビリテーション法」が制定され、障害者に対する差別の禁止や公共施設のバリアフリー化が求められました。
ユニバーサルデザインの形成
- 1980年代:
- ロナルド・メイス(Ronald Mace)の貢献: 建築家で自身も障害を持つメイスは、「ユニバーサルデザイン」という用語を広めました。彼は、障害者が使いやすいだけでなく、すべての人にとって使いやすい設計が重要であると主張しました。
- 1990年代:
- 7つの原則の確立: 1997年、ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザイン・センター(Center for Universal Design)が、ユニバーサルデザインの7つの原則を発表。これにより、デザインの具体的な指針が示されました。
- ADA(アメリカ障害者法)の影響: 1990年に施行されたADAは、公共施設や雇用、交通などにおいて障害者の権利を保障し、ユニバーサルデザインの推進に大きく寄与しました。
グローバルな展開
- 2000年代:
- 国際的な認知: ユニバーサルデザインの概念は世界中に広まり、日本でもバリアフリー法が改正され、建築物や交通のユニバーサルデザインへの取り組みが強化。
- 製品デザインへの応用: 家電製品からソフトウェアまで、さまざまな製品がユニバーサルデザインの原則に基づいて設計されるようになりました。
- 2010年代以降:
- デジタルアクセシビリティ: インターネットとデジタルデバイスの普及に伴い、ウェブアクセシビリティが重要視され、WCAG(ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン)のような基準が確立。
- 持続可能なデザイン: 環境問題への対応も含めた持続可能なデザインの一部として、ユニバーサルデザインが再評価され、社会全体のデザイン哲学として採用される。
現代の動向
- 教育と認証: ユニバーサルデザインの専門家を育成するための教育プログラムや認証制度が広まり、設計者や製品開発者への教育が進んでいます。
- 企業のCSR: 企業の社会的責任(CSR)の一環として、ユニバーサルデザインを取り入れる企業が増加。
- テクノロジーの活用: AIやIoTを活用したユニバーサルデザインの新しいアプローチが研究・実践される。
ユニバーサルデザインの歴史は、障害者の権利運動と密接に関連しつつ、社会全体の多様性と包括性を目指す動きの一部として進化してきました。現在では、ユニバーサルデザインは単に物理的なバリアを取り除くだけでなく、社会全体の価値観や生活の質を向上させるための重要な概念となっています。
ユニバーサルデザインの法律
インクルーシブデザイン
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